ユーザビリティの評価手法 (その2) : ユーザビリティテスト

ユーザビリティテストとは、ユーザビリティ評価のための手法のひとつで、ユーザー(サイト閲覧者)に、実際に評価対象のサイト(またはそのプロトタイプ)を使ってもらい、その様子を観察することで、様々な問題点を発見する手法です。

このユーザビリティテスト、基本は「仮説検証」です。「ターゲットユーザー像をつくる」でご紹介したペルソナシナリオをもとに、サイト内の「あるべき動線」を仮説として想定し、その動線を辿るいくつかの行為(タスクといいます)をユーザーに実際にやってみてもらい、「つまずき」や「戸惑い」などが無いかを、ひたすら観察するのです。

ちなみに実際にユーザビリティテストに協力してもらう(タスクを実行してもらう)ユーザーのことをテスター(tester:つまり「試す人」)と呼びます。「被験者」と呼ぶ人もいますが、それは間違っていると私は思います。なぜなら、試されるのはサイトのほうで、ユーザーの方ではないからです。実際にユーザビリティテストを行う際には、ぜひそういう謙虚な視点を忘れないでいただきたいと思います。

ユーザビリティテストは、実際のユーザーの行動を観察する手法なので、ヒューリスティック評価よりも「客観的なデータが得られる」という長所がある一方で、調査設計(仮説づくり)の精度や、テストの進行役(モデレーターといいます)の力量に結果が大きく左右されるというリスクがあります(モデレーターは、テスターにタスクをお願いする際、決して誘導的になってはいけません。また、テスターの主観的な「意見」を聞き出してその声を鵜呑みにしてもいけません)。また「ユーザビリティテストをやるには本格的なテスト用ラボや機材(ビデオカメラなど)を用意する必要があるのでは?」「テスターを集めるのが大変なのでは?」と思われてしまう節も多いように感じます。

私自身の考えとしては、きちんとしたテストラボや機材は必須ではなく、テスター集めも、手軽に「身近な人にちょっと協力してもらう」くらいで充分だと思います(もちろん、テスターが評価対象サイトの構造などをあらかじめ熟知している場合はテストにならないですが...)。ターゲットユーザー像のペルソナに合致したテスターを見つけることができれば理想的ですが、そうでなくても、テスト時にテスターに前提条件を与えておく(「あなたは〜なシチュエーションにいて、これから〜をしようとしています」といった具合)ことで、ある程度カバーできると考えます。むしろ、手軽に実施できる範囲のユーザビリティテストを、サイトの構築工程に応じて繰り返すことの方が重要だと思います。Webサイト構築の上流工程(具体的な作り込みに入る前の企画/設計段階)で一回実施し、基本的な画面設計(ワイヤーフレーム)ができたところで一回実施し、さらに具体的なページの作り込み(量産)ができたところでもう一回実施すると良いでしょう。

ところで、テスターは何人くらい集めれば良いの?という疑問があるかと思います。アンケート調査などですと「多いに越したことはない」となるでしょうが、ユーザビリティテストの場合、一般的に「5人いれば十分」とされています。私自身の経験でも、4人目のテストが終わった時点で7〜8割ほど問題点が抽出できて、最後の5人目ではさほど新しい発見はない(逆に、これまで発見された問題点を再度確認する)というケースが多いように思います。もちろん、「5人集められない場合はユーザビリティテストをしても意味が無い」ということはなく、たとえ2〜3人くらいしか協力者がいなくても、「やらないよりはマシ」だと思います。