フローティングタッチ

先日、ソニーモバイルコミュニケーションズから Android スマートフォン「Xperia sola」が発表されましたが、その特長のひとつが「フローティングタッチ (Floating Touch)」という機能です。

通常、タッチインターフェースを操作するには、指が画面に触れていることが必須になりますが (タップやスワイプなど)、この「フローティングタッチ」は、画面に指を近づけるだけで (実際に画面に触れなくても)、デバイスとのインタラクションが可能になるというものです。下の動画を見ていただくと、具体的にイメージしやすいでしょう。

タッチインターフェースで「ホバー (hover)」が可能に

フローティングタッチによって可能になるインタラクションとして考えられるのは、Web サイトを閲覧するときのマウスオーバーに相当する、いわゆる「ホバー (hover)」でしょう。

タッチインターフェースではホバー (hover) は使わない (使えない) というのが定石なので、それを覆す (?) という意味では興味深いです。たとえば、以下のようなユーザビリティの向上が考えられます。

音声読み上げ操作を効率的にする可能性

フローティングタッチを見てもうひとつ感じたのは、主に視覚障害者が利用する音声読み上げ機能 (スクリーンリーダー) を、より効率的に使えるかもしれない、ということです。

現状のスクリーンリーダーの操作 (iOS の VoiceOver 機能の場合)

画面上のオブジェクトに触れると、そのオブジェクトが何かを読み上げ、画面上をダブルタップする (または、オブジェクトに触れている指を離さずに別の指で画面上をシングルタップする) ことでオブジェクトを実行することができます。また、画面をスクロールするには3本指でフリックします。

現状のスクリーンリーダーの操作 (Android 4.0 の Explore-by-touch 機能の場合)

画面上のオブジェクトに触れると、そのオブジェクトが何かを読み上げ、その箇所をタップするとオブジェクトを実行します。画面をスクロールするには2本指でスワイプします。

フローティングタッチで音声読み上げを制御できるようになれば...

指を画面に近づけたところで (実際に指が画面に触れていなくても) その直下にあるオブジェクトを読み上げてくれれば、それ以降の操作においては、スクリーンリーダーを使わない場合と同一のジェスチャでインタラクションできることが期待できます (シングルタップでオブジェクトを実行したり、1本指でスクロールしたり、など)。これは、スクリーンリーダー使用の敷居を下げることと同時に、スクリーンリーダーの操作効率を上げることにもつながりそうです (フォームにテキスト入力させるような場合などは特にメリットが大きいかもしれません)。

ユーザーの心身の負荷増大の可能性

このように、ユーザビリティやアクセシビリティの面でメリットがありそうなフローティングタッチですが、その一方で、ユーザーの負荷が大きくなる可能性もあります。

というのも、実際にフローティングタッチを機能させるには、画面と指との間で、ある一定の距離を維持する必要があるからです。逆に、フローティングタッチを機能させないようにするためには、意識的に、ある一定の距離以上は画面から指を離しておかなければなりません。

このあたりのコントロールがうまくできないと、ホバー (hover) させながら情報を探索したいのに途中でホバー状態が解除されてしまったり、逆に予期せずホバーがはたらいてメインコンテンツの閲覧の邪魔になってしまったり...といったことが生じます。手 (手首や指の動きをコントロールするための筋肉) に過度の負担がかかるばかりでなく、心理的な負荷を感じる人も多いと思います。特に高齢者、手指に疲労がある人、移動中の人 (歩きながらデバイスを使っている) などにとっては、フローティングタッチを使いこなすのは容易ではない気がします。

フローティングタッチはあくまでも「nice-to-have (無くても構わないがあれば便利)」

フローティングタッチが、もし仮に市場で高評価を受けて、あらゆるタッチインターフェース機器で一般化することになったとしたら、Web サイトを作るうえでどう対応すればよいのでしょうか。

これまで見てきたように、フローティングタッチは便利な反面、ユーザーの心身の負荷を増大させる可能性もあることを考えると、フローティングタッチを使ったホバー (hover) による UI を経由しないと目的の情報に到達できない...といった Web サイトデザインは避けるべきだと考えます。ユーザーにとって必要なアクションはすべて画面接触 (タップ) でできること、そのうえで「nice-to-have (無くても構わないがあれば便利)」をフローティングタッチによるショートカットで提供する...というのが恐らくはあるべき姿ではないでしょうか。

そのうえで、これは Web コンテンツ側ではなくデバイス側の問題になりますが、フローティングタッチを有効にするかどうかは、ユーザーが主体的に選択できるのが望ましいと思います。

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