ウェブアクセシビリティ最新動向 2018 - 2019 (アクセシビリティの祭典 2019)

2019年5月16日の「Global Accessibility Awareness Day」に、神戸で開催された「アクセシビリティの祭典 2019」に登壇させていただき、「ウェブアクセシビリティ最新動向 2018 - 2019」というテーマでお話をしました。

当日のプレゼンテーションスライドは SlideShare でご覧いただけます。

また、下記よりプレゼンテーションスライドの PDF およびテキスト起こしをダウンロードできます。

セッション概略

今回のセッションでは、今年2月に発表された WebAIM Million (米国の WebAIM がアクセシビリティ検証ツール「WAVE」を用いた自動テストで、100万のホームページを検証してまとめたもの) をイントロダクションとして、ウェブアクセシビリティ改善の余地はまだまだたくさんあるとしつつ、3つの視点でお話をしました。

品質への社会的要求

ウェブ利用者の増加と多様化、ウェブの生活インフラ (社会基盤) 化、ウェブを介した QOL 向上ニーズの高まり、といった背景から、ウェブサイトやアプリケーションの品質に対する社会的な要求が (法規制という形で) 世界的に高まっています。昨年から今年にかけてのトピックとして、欧州アクセシビリティ法 (European Accessibility Act: EAA) の欧州議会での可決成立 (公的機関だけでなく、eコマース、交通機関、銀行など民間による公的なサービスに対してもアクセシビリティの担保が求められています) や、日本の障害者差別解消法に対する東京都の条例 (民間を含むすべての事業者による合理的配慮の義務化) も気になるところです。

ウェブがこれだけ生活に根付いた基本インフラとなった現在、アクセシビリティを「当たり前」な「品質基準」とするならば、ウェブアクセシビリティに関する法規制はあって当然なのでは? (世の中を見渡してみると、PL、食品安全、建築基準、など、モノづくりのあるところには大抵、ユーザーを守るための品質基準の法律があります) という問題提起をさせていただきました。

アクセシビリティ ✕ UX デザイン

2017年からウェブアクセシビリティのコミュニティでさかんに言われるようになった「インクルーシブデザイン」、つまり狭い意味でのアクセシビリティ対応 (WCAG の達成基準を満たす) だけでなく、障害者や高齢者を含むあらゆる人々のユーザー体験 (UX) に寄与するデザインをしてゆこうという動きが、ここ最近、実践レベルで見られるようになってきました。

ひとつは、障害当事者をテスターにした行動観察やユーザビリティテストです。ヤフー弁護士ドットコムのように、企業活動の一環として積極的にアクセシビリティ観点でテストを実施し情報発信するという事例が、少しずつ見られるようになってきています。

もうひとつは、デザインシステムやパターンライブラリーを通じたアクセシビリティ向上の試みです。アクセシブルなデザインパターン (再利用可能な UI パターン) を利用して効率的にアクセシビリティをスケールさせよう、という動きが今後も加速することを期待しつつ、本セッションでは、「認知パターン」(配色、インタラクションの動き、タイポグラフィ、アイコンデザイン、など) および「機能パターン」(ボタン、リンク、タブ、各種フォーム要素、フィードバックメッセージ、カード、ナビゲーションメニュー、など各種 UI コンポーネント) それぞれに対して仕込みが可能なアクセシビリティの配慮について、アイデアを挙げてみました。

WCAG 2.1

2018年6月5日に正式に勧告された Web Content Accessibility Guidelines の新バージョン「WCAG 2.1」について、新しく追加された達成基準をかいつまんでご紹介しました。初めての方でも概要を理解しやすいように、敢えてかなり「意訳」しましたが、興味があればぜひ原文をご参照いただければと思います。

WCAG 2.1 原文の日本語訳は、ウェブアクセシビリティ基盤委員会 (WAIC) で鋭意準備中ですが、作業途中のものは WAIC の GitHub リポジトリで公開されています。

まとめ

「品質への社会的要求」「アクセシビリティと UX デザイン」「WCAG 2.1」という3つの視点から、ウェブアクセシビリティ向上に関する最近の動向を見てきましたが、こうした動向を踏まえつつ改めて、ウェブにおけるアクセシビリティとは何か?と考えると、やはり「ウェブの基本品質」であり「ユーザー体験 (UX) の土台」であると言えるのではないか、と思います。ある目的を持ったユーザーに対して、障害などの条件ゆえにその人の目的達成やユーザー体験が妨げられることのないよう、デザインしたいものです。

...ということで、最後は Tim Berners-Lee (W3C Director and inventor of the World Wide Web) の有名な言葉でセッションを締め括らせていただきました。

The power of the Web is in its universality.

Access by everyone regardless of disability is an essential aspect.

ウェブが優れているところは、その普遍性 (みんなが使えること) である。

障害があるか否かに関わらず、誰でもアクセスできるということは、ウェブの本質的な在りかたなのである。

Accessibility - W3C

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