WCAG 2.1 に対する私的解釈 (その2) : 達成基準 1.4.11 Non-text Contrast

今年は、W3C の WCAG (Web Content Accessibility Guidelines) の新バージョンである WCAG 2.1 が、正式な Recommendation (勧告) になりました。

私も参加しているウェブアクセシビリティ基盤委員会 (WAIC) 翻訳ワーキンググループ (WG4) にて、鋭意日本語翻訳中です。(作業中ドラフト : Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.1 (日本語訳))

バージョンが 2.1 になり、ロービジョン、モバイル、認知/学習障害への配慮が強化され、より進化したガイドラインになったのは事実ですが、個人的には若干もやもやする箇所がいくつかあります。そこで当サイトでは、「WCAG 2.1 ではこう規定されているが、本当はこう考えたほうがもっとよいのでは?」という私的な解釈を加えてみたいと思います。

今回取り上げるのは、達成基準 1.4.11 Non-text Contrast (非テキストのコントラスト) (レベル AA) です。

The visual presentation of the following have a contrast ratio of at least 3:1 against adjacent color(s): (以下の視覚的提示には、隣接した色との間で少なくとも 3:1 のコントラスト比がある。)

User Interface Components (ユーザーインターフェース コンポーネント)
Visual information required to identify user interface components and states, except for inactive components or where the appearance of the component is determined by the user agent and not modified by the author; (UI コンポーネントおよび状態 (state) を特定するのに必要な視覚的な情報。ただし、アクティブではない UI コンポーネントや、そのコンポーネントの見た目がユーザーエージェントによって提示されていてコンテンツ制作者が変更していない場合は除く。)
Graphical Objects (グラフィカルオブジェクト)
Parts of graphics required to understand the content, except when a particular presentation of graphics is essential to the information being conveyed. (コンテンツを理解するのに必要なグラフィック部分。ただし、そのグラフィック特有の提示が、情報を伝えるうえで必要不可欠な場合は除く。)
出典 : WCAG 2.1 Success Criterion 1.4.11 Non-text Contrast (Level AA)

この達成基準の意図

もともと WCAG 2.0 では、文字情報 (テキストおよび文字画像) の視覚的提示に対して、コントラスト比の要件が達成基準として設けられています (ご参考 : 達成基準 1.4.3 コントラスト (最低限))。主にロービジョン向けの配慮として、情報の視認性を担保するためのものですが、昨今はモバイルデバイスを用いて屋外でウェブを利用するユーザーも多く、明るい日差しによる見づらさを軽減するうえでも、コントラストが十分あることが重要になっています。

WCAG 2.1 で新しく追加された今回ご紹介する達成基準 1.4.11 では、UI コンポーネント (例 : アイコン、ボタン、スイッチ、スライダー、状態を示すインジケーター、など) やグラフィカルオブジェクト (グラフ、チャート、マップ、記号、など) といった視覚的な表現においても、文字情報と同様に適切なコントラスト比を保つことが求められています。

なぜ文字情報よりもコントラスト要件がゆるいの?

ところで、この達成基準 1.4.11 では、コントラスト比の要件がなぜ「3:1」以上なのでしょうか。文字情報の場合、(従来からある達成基準 1.4.3 によって)「4.5:1」以上のコントラスト比が求められているのに対して、基準がゆるいのが気になるところです。

文字情報であろうと非文字情報であろうと、一定の条件下 (障害や利用状況による見えにくさ) で視認できないと意味が伝わらないというのであれば、どちらに対しても同等のコントラスト比が要件として求められてしかるべきでだろうと思います。その意味では、非文字情報 (UI コンポーネントやグラフィカルコンポーネント) の視覚的なデザインにおいても、特別な理由がなければなるべく 4.5:1 以上のコントラスト比を満たすようにしたいな、というのが私自身のこの達成基準に対する捉えかたです。

ちなみに達成基準 1.4.3 では、「大きな文字」であればコントラスト比が 3:1 でもよい、と記されています。ただこれも、ユーザーのウェブ利用デバイスが多様化している現在、コンテンツ制作者が「大きな文字」と想定していたとしても実際のユーザーの手元では「小さな文字」として提示されることは十分あり得るので、私自身が設計する際は、文字の大きさにかかわらず一律的に 4.5:1 以上のコントラスト比を満たすようにしています。そして同じ考えかたを、非文字情報のデザインにも適用するようにしているので、今回新たに達成基準 1.4.11 で「3:1」というゆるい要件を目にしたとき、少なからず疑問を感じたというのが正直なところです。

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