スクリーンリーダー利用に関するトレンド : 2015年7月実施の WebAIM 調査より

ウェブアクセシビリティ向上のために活動している米国の非営利団体「WebAIM (Web Accessibility in Mind)」による、恒例のスクリーンリーダー利用者調査 (第6回) の結果が発表されました。英語のレポートになりますが、WebAIM サイトの「Screen Reader User Survey #6 Results」で詳細をご覧いただくことができます。

当サイトでは、2009年の第1回目から、この調査をウォッチしてきましたが、スクリーンリーダーやインターネットの習熟度合い、無料/ローコストのスクリーンリーダー利用の多さ、モバイル機器でのスクリーンリーダー利用の多さ、ランドマーク (WAI-ARIA Landmark) 利用の多さなど、今回の調査でも全体的には従来とそう変わらないトレンドだな、という印象です。

そんな中、個人的にいくつか気になったことをピックアップします。

ZoomText と Window-Eyes

今回の調査では、利用されているスクリーンリーダーのうち、ZoomText と Window-Eyes が大幅に増えていることが、まず目を惹きました。「第一に使っているデスクトップ/ラップトップ用スクリーンリーダーは?(Which of the following is your primary desktop/laptop screen reader?)」という設問に対し、ZoomText と回答した人が22.2% (前回調査では1.3%)、Window-Eyes と回答した人が20.7% (前回調査では6.7%) もいて、NVDA や OS X VoiceOver を大きく上回っています。また、「普段使うことのあるデスクトップ/ラップトップ用スクリーンリーダーは?(Which of the following desktop/laptop screen readers do you commonly use?)」という設問に対しても、Window-Eyes と回答した人が29.6% (前回調査では13.9%)、ZoomText と回答した人が27.5% (前回調査では5.3%) と伸長していて、NVDA や OS X VoiceOver に迫る勢いです。

WebAIM もこの結果には驚いているようで、「The Resurgence of ZoomText and Window-Eyes」という考察記事を出しています。Window-Eyes については、前回調査の直後から Microsoft Office ユーザー向けに無償提供されていることが影響しているのではないか、また ZoomText については、前回以前の調査では ZoomText ユーザー (ロービジョンの利用者) の回答が少なかったのではないか、と推測しています。

たしかに今回の調査では有効回答数が大幅に増えており (前回調査の1,465人に対して2,515人)、それに伴ってか、障害の種類についても全盲 (Blindness) が6割強なのに対し、ロービジョン (Low Vision/Visually-Impaired) が4割弱もいるので、前回以前の調査でロービジョン回答者の割合が少なかったとすると、今回の結果はそう不自然ではないのかもしれません。ポピュラーなスクリーンリーダーの種類が増えたものの、相変わらず、無料またはローコストのスクリーンリーダーが支持されている、と言うことはできそうです。

ちなみに ZoomText のスクリーンリーダーの機能は、ZoomText の主要機能 (表示の拡大) に対する付加機能という位置づけですが、ZoomText のサイト (製品情報) を見ると、スクリーンリーダー機能の有無の価格差は US$200 程度なので、JAWS などを購入することを考えると、「ローコスト」と言ってよいかな、と思います。

スクリーンリーダーと併用するブラウザ

スクリーンリーダーと併用するブラウザの種類についての設問があるのですが (When using your primary screen reader, which browser do you use most often?)、もっとも多いのは IE10 以上 (34.9%) で、次いで Firefox (30.1%) が続いています。IE8 以下が 12.8% いて、これを「多い」と見るか「少ない」と見るかは微妙ですが、OS X Safari (7.9%) よりも多い結果になっており、WAI-ARIA に対応していないブラウザの利用が一定数あるという現状は、一応認識しておくのがよいかな、と思います (次回の調査ではほぼいなくなっていることを期待しつつ…)。

なお今回の調査では、スクリーンリーダーとブラウザの組み合わせについての設問もあるのですが (Most common screen reader and browser combinations)、NVDA+IE の組み合わせがほとんどいないというのが、軽く驚きでした。NVDA+Firefox の組み合わせ (11.4%) は、首位の JAWS+IE10+ の組み合わせ (16.6%) に次ぐ多さでしたが…。ちなみに、Chrome および ChromeVox は、今回の調査の回答者の間では、ほとんど使われていないようです。ウェブ開発者以外には、あまり知られていないのかもしれません。

複雑な画像に対するテキスト記述方式の好み

今回の調査で初めて、複雑な画像 (Complex Images) に関する設問がありました。「チャートやダイアグラム、漫画など、わずか数語でテキスト記述するのが難しい画像について、長く詳細なテキスト記述が可能だとしたら、どのような方式が望ましいか?(Some images, such as charts, diagrams, or comic strips, are too complex to describe in only a few words. If a long, detailed description of these images is available, how would you prefer to have it presented to you?)」というものです。

個人的には、回答選択肢のうち「同一ページ上で、画像のすぐ後に、テキスト記述がある (As text on the web page, immediately following the image)」というのがもっともよいだろうと思っていたのですが、この選択肢を回答した人が25.8%に留まったのに対し、もっとも多くの人が選択した回答は「同一ページ上で、テキスト記述があるが、その表示は任意で、リンクを押してリクエストすることで出てくる (As optional text, available on the same page but only if I request it by following a link)」というものでした (43.5%)。本文ではない、画像に付随した長い説明的なテキストは、読み飛ばしたい、という意識があるのでしょうか。

もっとも実際には、画像の種類、画像に包含される実質的な内容、画像が提示される文脈、などによって最適解が異なるだろうなとは思いますが、上記のような意識のスクリーンリーダーユーザーが多いことは、意外な感じがしました。

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