アクセシビリティ達成基準レベル「AA」について考える

最近、ある Web サイトの構築プロジェクトで、情報アーキテクチャ (IA)、ユーザーインターフェース (UI) 設計、アクセシビリティ、といった領域で関わらせていただく中で、アクセシビリティの達成基準レベル「AA」について、改めて考える機会がありました。そのサイトデザインが海外でも使われるということで、ある国の法制面からの要求で、W3C が勧告する「WCAG (Web Content Accessiblity Guidelines) 2.0」の達成基準レベル「AA」を満たすことを視野に入れておく必要に迫られたからです。

Web サイトがアクセシビリティ対応 (厳密に言うと「WCAG 2.0 (日本の場合は JIS X8341-3:2010)」への対応) を検討するとき、どのレベルの達成基準を満たすのかについては様々な事情を勘案したうえで決めるわけですが (開発リソースが十分か、スタッフのノウハウ/経験値はどのくらいか、継続的な運用が可能か、その他ビジネス上の判断によって)、今後は法制面からの要求、という側面も増えてきそうな気がします。

いくつか例を挙げてみますと :

上記以外にも、法律によって Web アクセシビリティの確保が求められる国はいろいろあります。日本でも、法的規制ではありませんが、総務省の「みんなの公共サイト運用モデル (2010年改訂版)」によって、国および地方公共団体などの公的機関の Web サイト (既存サイトを含む) は2014年度末までに JIS X 8341-3:2010 の達成基準等級「AA」に準拠することが求められています。

達成基準レベル「AA」の法制面での要求はウェルカムなこと。ただし敷居が高いのも事実。

Web アクセシビリティの担保が法制面から求められることは、ユーザーにとって、とてもウェルカムなことだと思います。特に、WCAG 2.0 の達成基準レベル「AA」を満たすように規定されることで、基本的なアクセシビリティに加え、たとえば以下についてもきちんと実現されることにつながります。

その一方で、レベル「AA」を満たすこと (そしてそれを維持すること) は、実際問題として敷居が高い側面があるのも事実です。特に民間企業の Web サイトでは、公的機関に比べ、よりエモーショナルな訴求をするためのコンテンツが要件となることが多くなると思います (プロモーションやデモンストレーションのための動画など)。また、サイトを運営する企業規模がそれなりに大きくなると、更新担当者も (様々な部署にわたって) 多くなり、コンテンツ品質維持という課題も出てくるでしょう。

具体的には、下記の達成基準はかなりのハードルになるのではないか、と懸念しています。

実際には、ハードルの高い達成基準は、免除されるケースもあるようです。たとえば、上述したカナダ (オンタリオ州) の場合、達成基準 1.2.4 および 1.2.5 は例外事項として免除されています。

達成基準レベル「AA」をどう実現し、維持するか。

達成基準レベル「AA」をどう満たし、維持するか。現時点では、ある意味、対象サイトの制作/運営に関わるすべての人が (ガッツで、または細心の注意力でもって) 頑張るしかない状況だと思いますが、それではやはり限界があるでしょう。

WCAG 2.0 および JIS X8341-3:2010 には、「アクセシビリティ・サポーテッド (Accessibility Supported)」という考えかたがあります。

...その結果、ユーザーが Web コンテンツをアクセシブルに利用することができることを意味します。つまり、コンテンツ側の実装技術と、ユーザーエージェント/支援技術側の対応状況の折り合いがついて、初めてアクセシビリティが実現する、という考えかたです。

この「アクセシビリティ・サポーテッド」の範囲に、もしかしたら、Web コンテンツを制作/更新するためのツールも含まれるようになると、よいのかもしれません。たとえば「動画配信インフラとしての (各サイトのページに自社動画コンテンツを埋め込む手段としての) YouTube に、音声ガイドを付加する機能が用意されている」とか、「CMS でコンテンツを作成中に、外国語表記部分を自動的に検知して、しかるべき lang 属性を (理想的には自動的に) 入れてくれる」、といったイメージですが、要はなるべく「(特定のスキルや経験を持った) 人に依存する」状態にしないことが、持続的にアクセシビリティを確保するうえで大きいだろうな、と思っています。

願わくば、こうしたアクセシビリティ対応が「やらされてる」感で取り組まれるのではなく、ビジネスの機会損失を防ぐ格好の機会と捕えられることを希望します。そのためにも、作業ハードルを下げ、無理なく仕事できるようにすることは、重要と言えるかもしれません。

達成基準レベル「AA」を目指すことを (法制面などを通じて) 社会が求めることは、とても意義があることなので、それ自体は受け入れつつ、自分なりにサポートできることを考えてゆきたいな、と思います。

記事を共有

Twitter に投稿 Facebook に投稿 はてなブックマークに投稿 Pocket に追加