Mac OS X における音声読み上げ (VoiceOver) (その2) : 「クイックナビ」と「トラックパッドコマンダー」

先の記事「Mac OS X における音声読み上げ (VoiceOver)」で、Mac OS X に標準装備されている音声読み上げ機能 (スクリーンリーダー) である「VoiceOver」について、ご紹介しました。

今回は、その続編として、「クイックナビ」「トラックパッドコマンダー」という便利な操作方法をご紹介します。

クイックナビ

「クイックナビ」とは、Web ページに埋め込まれた要素を任意に指定して、要素と要素の間を効率的に行き来することができる機能です。たとえば、ページ全体を詳しく読む前に、見出しだけを拾い読みする、といったことが素早くできます。

VoiceOver を起動後、右矢印キーと左矢印キーを同時に押すと、クイックナビが有効になります (クイックナビを無効にするには、再度、右矢印キーと左矢印キーを同時に押します)。

クイックナビが有効になっている状態で、右矢印キーと下矢印キーを同時に押すか、左矢印キーと上矢印キーを同時に押すと、クイックナビの対象 (見出し、フォームコントロール、Web スポット、表、ランドマーク、文字、単語、リンク、など) を切り替え選択することができます。ここで選択できる対象は、「VoiceOver ユーティリティ」の「Web」の中のにある「Web ローター」設定に準じます。

VoiceOver ユーティリティの「Web ローター」設定

あとは、上矢印キーまたは下矢印キーを押すことで、選択した要素 (たとえば見出しなど) の間を行ったり来たりすることができます。VO キー ([control]キーと[option]キーを同時に押すこと) を押しながら...といった手間が無いので、そのぶん、楽に操作できるでしょう。

また、クイックナビには、「単一キーの Web ページナビゲーション」という便利な機能も用意されています。VoiceOver ユーティリティで「コマンダー」の中の「クイックナビ」を開き、「クイックナビ使用時に単一キーの Web ページナビゲーションを有効にする」にチェックを入れます。

VoiceOver ユーティリティの「クイックナビ」設定

すると、VO キーなど他のキーを押しながら...といった手間をかけずに、下記のような操作ができます。

この「単一キーの Web ページナビゲーション」は、その他、様々なキーを使うこともできます。上記で開いた VoiceOver ユーティリティ画面の「クイックナビ使用時に単一キーの Web ナビゲーションを有効にする」チェックボックスのすぐ下に「コマンドを割り当て」ボタンがあるので、それをクリックすると、キーおよびコマンドの関係を参照することができます。

VoiceOver ユーティリティ「クイックナビ設定」の「コマンド割り当て」

トラックパッドコマンダー

「トラックパッドコマンダー」とは、キーボード操作の代わりに、トラックパッド上の指づかい (ジェスチャ) によって VoiceOver による音声読み上げをコントロールする機能です。記事「iPhone や iPad の音声読み上げ機能 (VoiceOver)」でご紹介したような操作が、Mac OS X を搭載したパソコン (マルチタッチトラックパッドを搭載したモデル) でも可能になります。

VoiceOver を起動後、VO キー ([control]キー+[option]キー) を押しながら、マルチタッチトラックパッド上で2本指を時計回りに回転して滑らすと、トラックパッドコマンダーが有効になります (逆に、反時計回りに指を滑らすと、トラックパッドコマンダーは無効になります)。

トラックパッドコマンダーが有効になっている状態で、マルチタッチトラックパッド上で2本指を時計回り/反時計回りに回転して滑らせると、ナビゲーションに使用したい要素 (見出し、フォームコントロール、Web スポット、表、ランドマーク、文字、単語、リンク) を切り替え選択することができます。ここで選択できる対象は (上記「クイックナビ」と同様に)、「VoiceOver ユーティリティ」の「Web」の中のにある「Web ローター」設定に準じます。

あとは、トラックパッド上を、上下にフリック操作することで、選択した要素 (たとえば見出しやリンクなど) の間を行ったり来たりすることができます。

この他、トラックパッドコマンダーを有効にしておくと、「iPhone や iPad の音声読み上げ機能 (VoiceOver)」でご紹介した下記のタッチインターフェース用ジェスチャを、パソコン (Mac OS X) でも使うことができます。

ページ全体を読み上げる
2本指で、上方向にスワイプします。
読み上げを停止する
2本指で、タップします。
現在位置から読み上げを開始する
2本指で、下方向にスワイプします。
読み上げ対象箇所を前後移動する
左または右にスワイプします。見出し、段落、リンク、箇条書き、といった情報の「まとまり」単位で、読み上げ対象箇所を前後に移動することができます。
一時的に消音する
3本指で、ダブルタップします。もういちど、3本指でダブルタップすると、消音状態が解除されます。
スクリーンカーテンを有効にする (画面を真っ暗にする)
3本指で、トリプルタップします。もういちど、3本指でトリプルタップすると、画面が表示されます。

このトラックパッドコマンダー、従来のスクリーンリーダー操作では当たり前のキーボード操作 (コマンドごとのキーコンビネーション) を覚える面倒が無いという意味で、とても画期的だと思います。視覚障害者の学習負荷を軽減できると同時に、スクリーンリーダーの操作を覚えるのが億劫な (視覚に障害を持たない) Web 制作者や Web サイト運営者にとっても、アクセシビリティ検証の敷居をぐんと下げることが期待できそうです。