ユーザビリティの評価手法 (その3) : 認知的ウォークスルー

ユーザビリティの評価手法として以前、ヒューリスティック評価ユーザビリティテストをご紹介しましたが、今回はもうひとつ、認知的ウォークスルーという手法をご紹介したいと思います。

認知的ウォークスルーとは、ユーザビリティ専門家が、ターゲットユーザーになったつもりで評価対象のサイトを閲覧/操作してみることによって、様々な問題点を指摘する手法です。

ユーザー(テスター)に参加/協力いただくのではなく、ユーザビリティ専門家が評価を行なうので、ヒューリスティック評価の一種であると言えますが、ターゲットユーザーがどんな人であり(ペルソナ)、どんなニーズやゴールをサイトに期待して行動するか(シナリオ)を基準に評価するという意味では、ユーザビリティテストに近い評価手法と言うこともできます(ゴール達成のためのタスクを遂行する人が、ユーザー/テスターの代わりにユーザビリティ専門家になっただけ、と考えることができるため)。こうして見ると、認知的ウォークスルーというのは、ヒューリスティック評価とユーザビリティテストの中間的な評価手法と言えると思います。

実際に認知的ウォークスルーが実施されるケースを見てみると、以下のような例が多いです。

  • ユーザビリティテストの実施が困難な場合(予算やスケジュールの関係でテスターのリクルーティングができないなどの理由で)に、ユーザビリティテストの代替として認知的ウォークスルーを実施する。
  • テスターを招いてユーザビリティテストを実施するのに先立って、ユーザーゴールの達成という観点からあらかじめ認知的ウォークスルーで問題点を抽出しておき、その結果に基づいてより洗練された評価対象サイト(検証用プロトタイプ)を用意する。

私自身がヒューリスティック評価を行う場合は、認知的ウォークスルーも併せて行なうことがほとんどです(というか、ヒューリスティック評価と認知的ウォークスルーの垣根を意識せずに同時に実施しています)。というのも、ユーザビリティ向上の目指すところが、最終的には「ユーザーが効率的に目的を達成し、満足感を得ることができるかどうか」だからであって、表面的なヒューリスティック評価を行なうだけでは、あまり実のある評価にならないと思うからです。