デザイニング Web アクセシビリティ(電子書籍版)

先に書籍レビューをさせていただきました「デザイニング Web アクセシビリティ — アクセシブルな設計やコンテンツ制作のアプローチ」が、このほど電子書籍化されました。発売日 (2016年12月22日) の少し前に見本誌をいただき、間が空いてしまいましたが、ご紹介したいと思います。

本書の公式情報およびお試し版のダウンロードは、株式会社ボーンデジタルさんのサイトをご覧ください。 「デザイニング Web アクセシビリティ (電子書籍版)」をマルチデバイスで表示

提供ファイルフォーマット

本書の電子書籍版は、PDF と EPUB ファイルがパッケージされています。このうち EPUB は IDPF (International Digital Publishing Forum : 国際デジタル出版フォーラム ) が策定した電子書籍ファイルフォーマットで、多くの電子書籍リーダーで読むことができます。ウェブのフロントエンド技術 (HTML や CSS など) を活用してコンテンツを形成するので、画面幅に応じて読みやすい形に (ウェブサイトで言うところのレスポンシブデザインのように) 誌面を提示することもできます (電子書籍の用語で「リフロー型」と言うそうです)。本書は、情報アクセシビリティを題材にしているものだけに、このリフローが徹底的にデザインされていて、読者の閲覧環境に応じて読みやすく配慮されています。本文のレイアウト (テキストと図表の配置) はもちろんのこと、巻末付録「WCAG 2.0 と本書内容の参照リスト」の提示のしかたが紙版からドラスティックに変わっていて (紙版では大きなテーブルで提示されているところ、電子書籍版ではリンクリストになっている)、なるほどデジタルメディアならではの表現だなと興味深く感じました。

なお、出版元のボーンデジタルさんのサイトから購入すると、Kindle用に調整した EPUB ファイルもパッケージに付属します。または、Kindle 版を Amazon で直接購入することもできます

† 註 : IDPF は 2017年2月1日に W3C に統合され「W3C@Publishing」となりました

電子書籍版ならではの使用感

本書はウェブアクセシビリティのリファレンスとして、制作者やディレクターの皆さんには、常に手元に置いて事あるごとに参照していただくのがよいと思います。その意味で、電子書籍であることによる柔軟なポータビリティや情報の見つけやすさ (検索機能を含む情報ファインダビリティ) は、大きなメリットであると感じます。

また、本書の中で参考 URL が多く紹介されていますが、電子書籍版では当然これらはハイパーリンクになっているので、タップひとつで参考文献にアクセスできるのはやはり便利です。

ありがたいことに当サイトも巻末で情報サイトとしてご紹介いただいているので (もちろんリンクされた状態で)、本書を通じて当サイトへのご参照がさらに増えたら嬉しいです。

また EPUB や Kindle の場合、上述のリフローだけでなく、電子書籍リーダーや閲覧アプリの機能によって文字サイズを大きくしたり背景色を変えたりフォントを変えたりして可読性を調整できるので、紙よりも柔軟な形で、情報アクセシビリティが向上していることを実感できます。

余談ですが、今回本書を通じて、リファレンス系の書籍を初めて電子書籍として使ってみたのですが、索引などリンクが頻繁に提供されているタイプの電子書籍を読むにあたっては、電子書籍リーダー/アプリ側に、ブラウザの「戻る」ボタンに相当する機能があったら便利だろうな、と思いました。オプションで、左右スワイプを (前後ページへの移動の代わりに) 閲覧ページ履歴を辿る機能として使えるようにする、などが考えられるかもしれません。

内容

電子書籍版の内容は、基本的には紙版と同じです。発売当初のバージョンでは、紙版の初版第2刷の内容をもとに制作されているそうで、紙版用に提供されている正誤表の内容については修正された状態になっています。

紙版の初版が2015年7月に発売されてから1年以上経っての電子書籍化で、その間にウェブアクセシビリティまわりではいくつかのアップデートがありますが (JIS X8314-3 が 2010年版から2016年版になったりなど)、それについては反映されていないようです。ただ、本書が伝えたい実質的な内容としては、特に影響はないと思われます。

アクセシブルな電子書籍への挑戦

今回の電子書籍化の実現は、情報アクセシビリティを題材にしているだけに、待ち望んでいた方も多かったかと思いますが、実際には紙版の発売から1年以上もかかったことから、その実現のためには多くの苦労があったのでは、と思われます。とりわけアクセシビリティという観点での品質面においては、こだわりやトレードオフがいろいろあったのかなと推察されるので、機会があれば、紙の書籍を起点にさらにアクセシブルな電子書籍を作り上げた今回の挑戦について、プロセス上の苦労話やノウハウなど、著者の太田良典さん伊原力也さんにお伺いできたら面白そうだな、と思いました。