ウェブサイトの IA は運営側を含む「人々」によって形作られる

ウェブサイトにおいて、情報のカテゴライズ、ディレクトリ構成、ナビゲーションシステム、メニューや機能のラべリング、ページレイアウトや UI 部品のパターン といった IA (情報アーキテクチャ) の基本的な枠組みは、サイト運用の実情と合っていなければなりません。当たり前に聞こえるかもしれませんが、この枠組みがわずかながらでも実情と合っていないことで、情報発信がやりにくかったり、効果的な情報発信ができなかったり、ということはままあることです。

各コンテンツ更新担当者は、設計された IA の枠内でコンテンツを拡充してゆくわけですが、その枠にフィットしないコンテンツ要件が生じるたびに、以下のようなことが起こり得ます。

こうして、サイトのユーザビリティが、どんどんスポイルされてしまうのです。

IA をサイト運用の実情と合ったものとし、効果的な情報発信を継続的に可能にするためには、いわゆる「ユーザー視点」を重視する (ユーザー中心設計のアプローチを採り入れる) ことと併せて、サイト運営側の意向を十分に理解し反映することが欠かせません。コンテンツを更新する担当者はもちろんのこと、サイトが扱う商品/サービスのマーケティング担当者、サイトに掲載される電話番号や問い合わせフォームを通じて顧客サポートに当たる担当者など、様々な立場のステークホルダーを巻き込み、サイト運用において現状どこが不満か (あるいは不便か)、ビジネスゴール達成のためにどういうコンテンツをどのように発信できたらよいと考えているか、といった意向を丁寧に吸い上げるのです。

ステークホルダーの巻き込みは、インタビューでもよいのですが、できれば設計プロセスの上流工程から参画してもらうのがよいでしょう。コンセプトワークに入ってもらったり、一緒にペーパープロトタイピングをしたり、ユーザビリティテストに立ち会ってもらったりするのです。そうすることで、ユーザー側と運営側それぞれの期待を考慮しつつ、地に足のついた形でひとつの設計に組み上げてゆけることが期待できます。なお、サイト運営側の意向という意味では、担当者やその管理者のレベルだけではなく、経営層に近い立場の方へのインタビューも有効です。担当者レベルではなかなか気づけない広い視野での課題意識を持っているので、サイト設計の根本的な方向性を見誤らないための有益な知見を得られることが期待できます。

IA、とりわけウェブサイトの情報アーキテクチャは、「人々」によって形作られると実感しています。この「人々」は、ユーザーであったり、運営側のステークホルダーだったり、と異なる立場を同時に含みますが、こうした多様な視点をバランス感覚を持って大事にしつつ、それでいて根幹となるコンセプトとぶれることなく、将来のコンテンツ拡充を予見し吸収できるように設計することが、効果的な情報発信を継続的にできるウェブサイトを実現するうえで大事なことだと考えています。