ウェブサイト側にシェアボタンを埋め込むことについて

ウェブサイトのデザイン (特に画面構成の検討) をしていて、ソーシャルメディアの各サービスが提供しているシェアボタンをページに埋め込むかどうか、議論になることはありませんか?

コンテンツがユーザーにとって役立つものだったり、備忘録的に残しておきたいものだったり、他人にも見てもらいたいものだったりすると「シェアする」という行為につながるわけですが、そのための機能はウェブサイト側に (コンテンツのひとつとして) 用意すべきなのでしょうか。

シェアボタンは「文字拡大ボタン」と同じ?

今や各プラットフォームにおいて (特にモバイルを中心に)、ブラウザ側の機能でシェアすることが十分可能になっているので、ウェブサイト側にシェアボタンを必ずしも置かなくてもよい、という考えかたはできると思います。

iOS の各ブラウザ (Safari、Chrome)、Android の各ブラウザ (Chrome、Firefox、Opera)、OS X の Safari では標準でシェア機能が搭載されていますし、Windows/OS X の他のブラウザ (Chrome、FIrefox、IE) もユーザーが望めばアドオンによってシェア機能を持つことができます。

「いやいやそうは言っても、ソーシャルメディアにシェアできることをもっとわかりやすく露出するために、シェアボタンが必要でしょう」という声が聞こえてきそうですが、そう言われてしまうと「文字拡大ボタン」について考えたことと近いものを感じてしまいます (ご参考 : ウェブページに文字拡大機能を置くのは「時代遅れ」)。つまり、「シェアボタンは (文字拡大機能と同様に) サイト特有のコンテンツではないと言えるので、であればその機能はユーザーエージェント (ブラウザ) 側で担うべきではないか?」という考えも成り立つように思うのです。

基本的にウェブサイト側は、ユーザーの目的達成 (およびユーザーが置かれているコンテキスト) に沿って必要なコンテンツやナビゲーション、CTA (Call To Action : 行動喚起) を過不足なく提供することに注力すべきで、それ以外の要素は、可能な限り排除してシンプルにしたいものです。

実際のシェア行為はシェアボタンに依存しないことが多い

ユーザー行動を実際に観察してみると、シェアする行為は、ウェブページに埋め込まれたシェアボタンに依存しないことが多いことがわかります。上述したブラウザ側のシェア機能以外では、たとえば RSS リーダー上で (実体のページにアクセスする前に) ソーシャルメディアに投稿したり、Twitter のタイムラインに流れてきた他人のツイートを「リツイート」したり、Facebook で友達が紹介したものを Facebook 上で「シェア」や「いいね!」をしたり、といった具合です。

特にソーシャルグラフ色が強い SNS (Facebook など) の場合、純粋に「(ある特定の) ウェブページをシェアする」というよりは「友達や尊敬する有名人が言及したから自分もシェアする」という傾向が強いように感じます。その流れで、シェア行為も Facebook アプリ内で完結することが少なくありません。

シェアボタンはソーシャルプルーフになる?

ウェブページにシェアボタンを埋め込んでおくと「どのくらいの数の人がシェアしているか (=ページの人気度)」が明示されるので、それがコンテンツを読んでもらう動機付けになる」という意見もよく聞きます。たくさんの人が「ツイート」なり「いいね!」しているからコンテンツの信頼度が増すという、いわば「ソーシャルプルーフ (social proof)」としてのはたらきが期待されているのだと思います。

そういった側面は無いではないかもしれませんが、実際に人気度の数値を目にするのはユーザーがそのページにたどり着いてからであって、当該ページ (コンテンツ) ヘの事前誘導策として機能しているわけではないことに留意する必要があるでしょう。また、せっかくページにたどり着いてくれたユーザーに対して、人気度の数値を提示していたずらにフィルターをかける (読むかどうかの判断ゲートを設ける) 必要も無い気がします (ページにたどり着いてくれたすべてのユーザーにコンテンツを読んで欲しいはずです)。

もっと上流の、たとえば記事一覧ページなどで、個々の記事タイトルと共にシェアボタン (シェア数) を配置するという手もあるかもしれませんが、記事数が多いとパフォーマンスに影響しそうですし (個々の記事のシェア数を拾い出して一覧ページ上に表示し終わるまでに時間がかかる)、シェアボタン自体は本来「ボタンを押してそのページをシェアする」ためにデザインされているので、同一ページ内に同じようなシェアボタンが並んでいるとユーザーが混乱してしまう恐れもあります (「このボタンを押すと何がシェアされるんだろう?この記事?それとも一覧ページ全体?」とユーザーを余計に考えさせてしまう)。

シェアを「レイティング」の一種と考えると…

シェアするという行為は、ある意味、そのコンテンツに評価の一票を投じる「レイティング (rating)」の一種と考えることもできます。

たとえば、あるコンテンツを利用中に「この内容はあなたの役に立ちましたか?」的なレイティング要求が割り込んできたら、多くの人は煩わしく感じると思います (自分自身の目的達成とは関係だからです)。シェアボタンの場合、そこまでユーザーのコンテキストに割り込んでくるほどのインパクトは無いかもしれませんが、ユーザーの目的達成のための行動にとって情報ノイズになっている可能性はあります。

レイティングと同様、シェアするかどうかは完全にユーザーの任意に委ねるべきであって、様々なシェア手段が選択可能である現状、特に考えなしにシェアボタンをウェブページに埋め込もうとするならば、もう少し慎重に考えてもよいかな、と思います。

アクセシビリティ面での影響

各ソーシャルメディアサービスがシェアボタンの埋め込みコードを提供している場合、アクセシビリティ面で影響があるかもしれません。

たとえば、スマートフォン (タッチインターフェースのモバイルデバイス) ではボタン表示が小さすぎてうまくタップできなかったり、マウスを使えない PC ユーザーがキーボード操作 ([Tab] キーでフォーカスを当てて [Enter] で実行する) のみでシェア行為を完遂できなかったり、スクリーンリーダーの読み上げがうまくいかなかったり…といった可能性が考えられます。実装にあたっては、支援技術を含め挙動を確認したいものです。


シェアボタンの埋め込みは、「他のサイトもやっているから…」「これまでやってきたし…」という程度の理由で惰性的に実装されることが多い気がしていたので、この記事では敢えてネガティブな側面を並べてみました。個人的な考えとしては、これが必須機能 (ないとユーザー行動が阻害される) とは思えませんし、さほど「nice to have」な機能とも思えず、実装すべき妥当な理由がよくわからない...というのが正直なところです。