電子書籍リーダーの普及とモノクロブラウザ

日本の Amazon で「Kindle (キンドル)」の発売が発表されたり、楽天から「Kobo Touch (コボタッチ)」の発売が発表されたり、と、いよいよ日本でも電子書籍リーダーが大きく普及しそうな勢いを感じる今日この頃です (期待を込めて...)。

iPad のようなタブレット機器に比べて、目が疲れにくい (E Ink による「電子ペーパー」)、ハンディである (サイズが小さく軽い)、バッテリーの持ちがよい、安価である、といったメリットがあるので、「多目的ではなく電子書籍を読むことに特化した "手頃な" デバイスが欲しい」という人にとっては、今回の Amazon や楽天の発表は注目のニュースではないでしょうか。

電子書籍リーダーによってモノクロブラウザもポピュラーに?

電子書籍リーダーは基本的に読書用のデバイスですが、コンテンツをダウンロードするために、Wi-Fi などで Web (インターネット) に接続することが可能になっています。加えて「Kobo Touch」ではソーシャルメディア連携 (読書記録の共有など) も特長のひとつとして謳われており、Web 接続を介した新しい読書体験、というのも今後は色々と出てくるかもしれません。

そして、この Web 接続機能に合わせる形で、Web ブラウザを搭載している電子書籍リーダーも少なくありません。メインの用途 (読書) ではないので「おまけ」のようなものかもしれませんが、以前から発売されているソニーの「Reader (リーダー)」にもブラウザ搭載モデルがありますし、「Kindle Touch」や「Kobo Touch」にも、ブラウザが搭載されています。

これらのブラウザは、「電子ペーパー」なので当然モノクロ (白黒) 表示しかできないのですが、リビングや寝室、外出先などで読書をするついでに、手にしているデバイス (つまり電子書籍リーダー) でさらっと Web ブラウジングもする...というユースケースはありそうです。「気になったコンテンツは取り敢えず備忘録的にソーシャルメディアでシェアするなどしておいて、後で PC でじっくり見る」という具合に、あくまでサブ端末的な用途であれば、電子書籍リーダーのモノクロブラウザであっても十分実用的と感じる人は案外いるのではないでしょうか (特に iPad などタブレット機器を持たない場合)。

電子書籍リーダーが今後普及してゆくことによって、モノクロブラウザを介した Web サイトの閲覧がどのくらいポピュラーになってゆくのか、興味深いところです。

Web デザインでますます求められる「色だけに依存しない」

皆さんが制作あるいは運営している Web サイトを、電子書籍リーダーのモノクロブラウザに対応させるべきか、という議論は当然あるかと思います。ターゲットユーザー像とそのユーザー行動シナリオに照らし合わせた結果、電子書籍リーダーのブラウザへの対応については優先度を下げよう、という判断に至ることもきっと多いでしょう。

費用対効果の観点で、電子書籍リーダーのブラウザに最適化したデザインをわざわざする必要は無いかもしれませんが、多種多彩なデバイスでのアクセシビリティをできるだけ担保する、「コンテンツファースト」や「Future Friendly」といった考えかたに沿った Web サイトを目指す (参照 : モバイルファースト/コンテンツファーストという考えかた)、というベクトルで考えれば、電子書籍リーダーのブラウザも、当然対象として含めたいところです。

その際、レスポンシブ Web デザインのテクニックを応用して6インチ程度の (タブレットより小さくスマートフォンより大きい) 画面サイズに合わせたレイアウト設計をする、ということももちろん大事ですが、それに加えて、モノクロの画面表示 (色を排除した状態) でも情報を適切に理解でき、Web サイトを利用できることが重要になってきます。

具体的には、モノクロでプリントアウトしたり、グレースケールで画面表示したりして、個々のコンテンツを検証することになりますが (すでに公開されているサイトであれば、もちろん、電子書籍リーダーで検証することもできます)、そのうえで、たとえば以下のような方策が考えられます。

以前書いた記事「色だけに依存しない (その1/その2)」にも通じることですが、これからは、色覚特性を持った視覚障害者への配慮だけでなく、モノクロブラウザで Web を閲覧することに対する配慮も求められることでしょう (もしかしたら今後は後者のほうが多くなるかもしれません)。「色だけに依存しない (その2)」の末尾で「まずはモノクロで情報設計する」ことをおすすめしていますが、そういったことも含め、色を排しても差し支えなく理解/利用できる、アクセシブルな情報デザインを心がけたいものです。