スキップナビゲーションの終焉?

先の記事「一般ブラウザにおけるセクション間の移動 (キーボード操作)」を書きながら、ふと思ったことがあります。それは、一般ブラウザ (支援技術ではないブラウザ、ここでは Internet Explorer、Firefox、Google Chrome、Safari、Opera を指します) が、Web コンテンツ内の「内容ごとの塊 (セクション)」、たとえば見出し要素、WAI-ARIA ランドマーク、HTML5 形式のセクション (<header>、<nav>、<footer>、など) を、キーボード操作 (ショートカットキー) で容易に行き来できるようになれば、いわゆる「スキップナビゲーション (グローバルナビゲーションなどを飛び越して、ページ本文のアンカーに行けるリンク)」が、いよいよ不要になるのではないか?...ということです。

支援技術の大半はセクション間移動が可能 (あとは一般ブラウザでも可能になれば...)

すでに、スクリーンリーダーの大半は (無料で入手できる「NVDA」や「VoiceOver」を含め)、キーボード操作による見出し要素間の移動ができるようになっていますし、WAI-ARIA ランドマーク間を移動できるものも珍しくなくなっています。以前「スキップナビゲーションを実装する」という記事で、「日本で使用されている音声読み上げツールには、見出しナビゲーション機能を持たないものも少なくないので、アクセシビリティの観点から、特にナビゲーションメニューのボリュームが大きいサイトでは、念のためスキップナビゲーションを実装しておくほうがよい」と書きましたが、その後、日本において大きなシェアを持つ「PC-Talker」も、見出しナビゲーション機能を持つに至っています。

情報認知や操作において (視覚のみならず) 音声読み上げにも頼ることができない、という場合は、点字ディスプレイを使うなどの手段がありますが、スクリーンリーダーの機能と併用できることが多い (スクリーンリーダーのショートカットキーを使って操作できる) ため、セクション間移動は十分に可能と考えてよいと思います。また「ブレイルセンスプラス」のようなスタンドアローンの点字入出力デバイスでも、今では機能拡張によって見出しナビゲーションができるようになっています。

もちろん、他にも考慮すべき支援技術はあるかもしれませんし、より確実なアクセシビリティの実現を考えると、今の時点ではスキップナビゲーションを実装しておいたほうが「現実的」と言えるかもしれません。ただ、すでに大半の支援技術においてセクション間移動 (少なくとも見出しナビゲーション) が可能になっている現状、一般ブラウザでキーボード操作によるセクション間移動がもし可能になれば、もはやスキップナビゲーションの存在意義は無くなってゆくのではないか...と考えてみるのも、悪くないと考えた次第です。

スキップナビゲーションを実装する際に考えるべき「煩わしさ」からの解放

ちなみにスキップナビゲーションについて真面目に考えると、実は下記のように、意外と色々なことを考える必要があります (あまり深く考えずに、「他のサイトでやっているから」という感じで実装されてしまうケースもあるとは思いますが...)。もし仮に、スキップナビゲーションの存在意義が無くなれば、これらを考える「煩わしさ」からも解放されることになります。

JIS X8341-3:2010 (WCAG 2.0) における「ブロックスキップ」との兼ね合い

ところで、JIS X8341-3:2010 の達成基準 7.2.4.1 (WCAG 2.0 の 2.4.1) には、「ブロックスキップ」、つまり複数の Web ページ上で繰り返されているコンテンツの塊を何らかの方法で読み飛ばせるメカニズムが利用可能でなければならない、という規定があります。これは、必ずしも「スキップナビゲーションを Web コンテンツ内に記述しなければならない」という意味ではないと思っています。「Web コンテンツが適切にマークアップされて (セクションや見出しがセマンティックに明示されて) いれば、あとはブラウザや支援技術といったユーザーエージェントの側がすべからくそのセマンティクスを解釈し、セクション間を任意にジャンプ移動できる」... そんな利用環境が整っていれば、自ずとこの達成基準は満たされていることになると考えています。


以上、「たられば」な話であることは承知していますが、スキップナビゲーションは本来であればしなくてもよい、小手先の「ハック」だと思っています。そんなハックをわざわざしなくても、本来なすべきこと (Web 標準仕様に基づいたセマンティックなマークアップ) をきちんとしていれば、自ずと Web コンテンツがアクセシブルになる... そんな理想めいたことを、ちょっと思ってみたのでした。