進化するNVDA

以前、当サイトのコラム記事で、無料で使えるスクリーンリーダー「NVDA」をご紹介しました。NVDAはオープンソースで開発されており、有志によって絶えず機能改善や動作改善が図られています。日本語版も、NVDA日本語化プロジェクトのメンバーによって、公式リリースではない開発版(trunk)であれば毎月1回から3回くらいの頻度でアップデートされています。

先のコラム記事(オープンソースの無料スクリーンリーダー「NVDA」)の執筆時は、公式リリース版を使っていて、そのときに感じた不満(というよりは、こうなったらいいなという期待)を下記のように記していましたが:

欲を言えば、ディスプレイ表示と音声読み上げが同時にできれば(音声を聞きながら文字表示でもチェックできれば)良いかな、と思いました。

現状のNVDAはまだちょっと動作が重たいかな、という印象もありますが(私の環境ではCPU負荷がすぐいっぱいになって、ハングアップすることがしばしば...)

今回、久々に最新の開発版を入手(2010年3月23日に「r3560j」をダウンロード)したところ、ずいぶん改善されていたので(偶然だとは思いますが、開発に携わる方々の問題意識も私と同じところにあったのかな...と思うと、なんだか嬉しいですね)、ご紹介したいと思います。

ディスプレイ表示と音声読み上げについて

開発版のNVDAでは、ディスプレイ表示と、音声での読み上げが、同時にできるようになりました。

以前は、読み上げ内容をディスプレイに表示するには、「設定」メニューの「出力先」で、音声出力先となる音声合成エンジンを選ぶか、ディスプレイに視覚的に表示するかを選ぶ仕様になっていました(つまり、音声出力とディスプレイ出力は、相互排他的な関係にありました)。

今回使ってみた開発版では、音声出力先の選択とは別のメニューで、ディスプレイでの表示をオン/オフすることができます。具体的には、「ツール」メニューで「スピーチビュアー」を選択してチェックを入れると、ディスプレイに、読み上げ内容を表示することができるようになりました。
NVDAの「ツール」メニューで「スピーチビュアー」を選択
「設定」メニューの「出力先」で音声合成エンジンが選択されていれば、音声を出力(読み上げ)しながら、ディスプレイ(スピーチビュアー)に読み上げ内容を表示することができるようになっています。Webサイトの内容を視覚と聴覚の両面でチェックできるので、Webサイトの制作者やウェブマスターの皆さんにとって、アクセシビリティ検証をする上で、とても便利ですね。
音声を出力しながら「スピーチビュアー」を表示

動作の重さについて

全体的に、NVDAの動きが軽快でスムーズになった印象を受けました(もっとも、厳密なベンチマークテストをしたわけではなく、あくまでも個人的な体感ではありますが...)。

以前試した公式リリース版では、パソコンのCPU負荷が著しく大きくなってしまい、動かなくなることが度々ありましたが、同一パソコンで開発版を動かしてみたところ、少なくとも動かなくなる(ハングアップする)ことはまずありませんし、基本的な操作においてフラストレーションを感じることも特にありませんでした。

基本的にアプリケーションソフトは動きが軽ければ軽いほど良く、また軽くて当たり前とユーザーに期待されがちなので、この手の要望は「永遠の課題」なのかもしれませんが、一定レベルのストレスフリーは実現できているのかな、と感じました。ちなみに私自身がNVDAをインストールして試してみたパソコンは複数あるのですが、いずれも、3年以上前に標準的なスペックだった、Windows XPのノートPCです。


いかがでしょうか?今回上記で話題に取り上げた機能は、まだ公式リリース版には反映されておらず開発版(trunk)でしか体験できないので、実際の使用にあたっては予期しない問題を含んでいる可能性があります。ただ、私自身のパソコンで使ってみたところ、非常にスムーズにインストールでき、動作も特に問題ありませんでしたので、NVDAの最新バージョンを試してみたいという方は、ぜひ入れてみてはいかがでしょうか。冒頭で書いたように開発版(trunk)は月に数回の頻度でアップデートされているので、上記以外にも、色々な発見があることでしょう。私自身、もっと勉強してより深く使いこなせればと思います。

なお、NVDA日本語化プロジェクトでは、「NVDA日本語版 操作ガイド」というとてもわかりやすいマニュアルも公開されました。もともとは、Webアクセシビリティを勉強されていた学生さんの卒論の一部なのですが、一般に公開しても大変役立つ有意義な内容だということで、NVDA日本語プロジェクトにて公開されるに至ったようです。基本操作の解説だけでなく、練習問題も含まれているので、初めてNVDAの操作に挑戦しようという方はもちろんのこと、スクリーンリーダーをまったく使用したことがない方にもおすすめです。

今後も当サイトでは、無料でありながら、高機能で使いやすくなってゆく(であろう)スクリーンリーダー「NVDA」の発展を、応援したいと思います。