アクセシビリティはウェブの「標準品質」

W3C (World Wide Web Consortium) の Director である、Tim Berners-Lee (ティム・バーナーズ - リー) 氏の言葉で、とても印象的なものがあります。私自身この言葉を初めて目にしたとき、とても素敵だなと感動したので、紹介させていただきたいと思います。

The power of the Web is in its universality.
Access by everyone regardless of disability is an essential aspect.

ウェブが優れているところは、その普遍性 (みんなが使えること) である。

障害があるか否かに関わらず、誰でもアクセスできるということは、ウェブの本質的な在りかたなのである。

出典 : Accessibility - W3C

W3C はウェブの標準仕様をまとめて、その普及推進を行っている組織ですが、Tim Berners-Lee 氏はその創設者であり、ウェブの考案者としても有名です (実際に、世界初のウェブブラウザとウェブサーバーを開発した人としても知られています)。そのような、言わば「ウェブの生みの親」に相当する立場の人が、このようにウェブアクセシビリティの重要性を宣言することの重みを、私たちは改めて認識すべきだと思います。

実際、ウェブというメディアは、他の他のメディア (新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど) に比べて、アクセシブルな情報伝達がしやすい技術的素地を持っています。ウェブサイトの構築に際しては、W3C が推奨する「ウェブ標準 (Web Standards)」という考えかたに則り「情報の内容 (セマンティクス)」と「情報の提示方法 (見栄えや振る舞い)」を別々に司る形にすることによって、「情報の内容」を様々な形態で提示することができます。他のメディアだと、いったん作ったコンテンツを別の形態で出すには作り直しが必要になりますが、ウェブであれば、「情報の内容」をユーザーエージェント (ブラウザや支援技術など) がどう解釈し出力するかによって、多種多様に情報提示の形を作り出すことができる、その結果、様々な情報利用ニーズに応えることができる、というわけです (健常な PC ユーザーに対してはこういう形で提示するが、視覚障害者にはこう提示し、上肢障害者にはこう提示し、聴覚障害者にはこう提示し、高齢者にはこう提示し、モバイル機器のユーザーにはこう提示する...といった具合に)。

せっかく、ウェブという「ユニバーサルな (みんなが使える)」メディアに携わっているのですから、より多くのユーザーをハッピーにするためにも、ウェブアクセシビリティの向上に積極的に取り組みたいものです。あらゆるウェブサイトにおいて、アクセシビリティというのは決して特別なものではなく、むしろ「標準品質」として盛り込まれるべきだろうと、私自身、強く思います。