ユーザビリティテストの基本はあくまでも仮説検証ベースの行動観察

このサイトの記事「ユーザビリティの評価手法(その2):ユーザビリティテスト」の中で、テスター(テストに協力いただくユーザー)は「5人いれば十分」と述べました。Webユーザビリティの第一人者、Jacob Nielsen(ヤコブ・ニールセン)氏のコラム「Alertbox」にある「5ユーザでテストすれば十分な理由」でも有名な理論なので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。ただし「5人」で可能なのは、あくまでも、仮説検証ベースによる「そのユーザーインターフェースがユーザービリティ上問題ないか?」の行動観察であることに留意する必要があります。

最近は、ユーザビリティという言葉も広く認知されるようになり(上記の「Alertbox」コラムの内容を間接的にせよ聞きかじった方もいて)、「テストは5人でやれば十分なんですよね」とおっしゃるクライアントさんも見受けられるようになりました。ただ「なぜ5人で十分なのか」という根本的な理解が適切でないために、いざテストをやろうというときに「あれもこれも、せっかくなのでテスターさんに聞いてみよう」となってしまうケースが多いのです。

サイトやサービスの顧客ニーズに関する「生の声」を、せっかくの機会なので色々聞きたい、という気持ちもわからないではないですが、本来であればそれはもっと適切な別手段(たとえばアンケートによる定量調査やインタビューなど)で調べたほうがよいと思います。

ユーザーの「生の声」を聞くこと自体は否定しませんし、実際に参考になる意見が聞ける可能性もあります。が、ユーザビリティテストの際についでに聞く場合は、あくまでも参考程度であると割り切るべきでしょう。そもそも、たった5人程度のユーザーに聞いてみただけでは(いくら「生の声」とはいえ)胸張って「十分ユーザーニーズを探った」とは言えないでしょうし、なによりもテスト結果の分析過程において、ユーザビリティテストでは絶対にやってはいけない「テスターの主観的意見を鵜呑みにしてしまう」ことに陥る危険性があるからです。

ユーザビリティテストでユーザビリティ検証を行なう場合は、あくまでも仮説検証を前提とした調査設計に基づいて、ユーザーの(意見ではなく)行動を観察することにしましょう。それを(できれば繰り返し)徹底することによってこそ、少人数のテスターでテストすることの効果を最大限生み出すことができるのです。