Webサイト閲覧の手前(ユーザーエージェント)に関する雑感

このサイトの読者(現役でWebサイトを制作/運営されている方)の多くは、(勝手な想像ですが...)お正月などで帰省すると「親御さんのパソコンのサポート係」として重宝されるのではないでしょうか(笑)。私自身、父親のパソコンにたまったゴミデータを掃除したり、各種設定を整理したり、ウィルス対策ソフトの更新手続きをしたり、ハードディスクのデフラグをかけたり...と、毎年、ひと仕事です。

そんな、毎年の帰省のたびにつくづく思うことがあります。それは:

Webサイト(ホームページ)を閲覧するための環境(パソコン)自体が、そもそも全然、アクセシブルでない(ユニバーサルに誰でも使えるようになっていない)ではないか。

...ということです。主に「コスト」と「使い勝手」の観点から、述べてみたいと思います。

コストの問題

特に定年を迎えて年金生活を送る人にとっては切実ですが、ウィルス対策ソフトを毎年更新(そのたびに数千円かかる)したり、パソコンを数年ごとに(2年から3年くらいのスパンで)買い換えたりしなければならないというのは、気の毒な感じがします。

私自身、IT業界の端くれにいる者として、テクノロジーが日進月歩であることや、ハードディスクには寿命があること、OSなどソフトウェアのサポート期限をあるタイミングで区切らないとベンダーのサポートコストが累積されて首が回らなくなること、といった事情は承知しています。とはいえ、そんな状況が、収入と身体能力が低下したシニア層(リアルの世界では行動範囲が狭くなってしまったものの、それだけにネットの力を使うことで生活をより豊かにできるであろう層)にしわ寄せが行っているという現実。梅田望夫さんが「ウェブ進化論」の中で述べているチープ革命がどこまで進むのやら。なんとか、いい落としどころがあればいいのに、と思います。

使い勝手の問題

国内大手メーカー製のパソコンに多い傾向だと思いますが、以下のような問題によって、使い勝手が悪くなるケースがよく見られます。

プリインストールソフトが無駄に多い

各種体験版ソフトやインターネットプロバイダーのスターターキットがてんこ盛りで、デスクトップがショートカットだらけになったり、スタートメニューに表示されるリストが膨大になったりします。似たような体験版やスターターキットが複数社分入っていたりすると、何がなんだか違いがわからなかったりします。その上、最終的には使われないものが多いので、情報ノイズ以外の何物でもないというのが私の正直な印象です。

やたらポップアップが出てくる

メーカーからの「お得なお知らせ」や、メーカーサイトへのリンクボタンを持ったウィジェットが、いくら閉じても数分おきに(しかも派手に!)出てきたりします。このようなポップアップは、ユーザーの思考や作業を中断させてしまいやすく、フラストレーションを与える結果となります。また物理的にデスクトップの一部を占拠するので、邪魔になることも少なくありません。

しかも、ウィジェットにあるリンクボタン(たとえば「困ったことがあったらこちら!」みたいな)をクリックしてサポートページを開いたら、難しい用語が並んでいて、結局初心者にはわかりにくかったり。基本的なLPO(Landing Page Optimization)がなっていないですね...。

ソフトウェアの文字サイズが変更できない

シニアの人は、ブラウザの幅を大きく広げて、サイドの表示エリアに「お気に入り(ブックマーク)」を表示させることが多いです。ここでひとつ大きな問題があるのですが、ブラウザに用意されている文字拡大機能(たとえばInternet Explorerの場合、「表示」メニューの「文字のサイズ」)で制御できるのはWebページの中身に限られていて、「お気に入り」リストの文字は大きくなりません。リストの行間も決して十分とは言えず、人によっては使いにくくなっています(特にシニア層にとっては、細かなリストを見てターゲット項目を選び出し、面積の小さなターゲットまでマウスポインタを運んで正しくクリックすることは、容易ではありません)。

少し余談になりますが、同様の問題はメーラー(Outlook Expressなど)でも見られます。文字サイズを変更する機能はあっても、その対象はメール本文に限られるため、メールボックス(フォルダによる分類)表示には影響しないのです。この現象はブラウザを使う場合よりも深刻で、たとえば受信したメールをフォルダに整理したいときなど、マウスで適切な場所にドラッグ&ドロップするのがとても困難になります。

このサイトは、Webサイト(ホームページ)のユーザビリティについて扱っていますが、私はそれ以前に、ユーザーエージェント(パソコンや利用ソフトウェア)自体、もう少し使う人にやさしくなって欲しいと常々思っています。

シニア層の中には、パソコンやインターネットは面倒くさそう/難しそうだから敬遠しているという人が少なくありません。上記の様子を見れば当然だと思います(PCに慣れている私自身ですら、視界に情報ノイズが割り込んできたり、操作法が直感的にわからなかったりで、うんざりすることがあるくらいですから)。

そんな人でも、たとえばGoogle Earthを見せて、昔住んでいた場所や旅した場所などを見せると、とたんに目を輝かせて面白がったりするものです。ネットを通じていろんな人とつながったり、買い物したり、自己表現ができたりすれば、より一層人生が充実することを実感できる人も、少なくないことでしょう。

インターネット自体は、年齢を問わず楽しいものだと思います。特に、行動範囲が限られるシニア層にとっては、その恩恵はとても大きいと思います。それだけに、ユーザーエージェントがアクセシブルでユーザブルになってゆけば、もっと生活を楽しく充実したものにできる人が、きっとまだまだ埋もれていると思います。パソコンメーカー、携帯端末メーカー、その他ユーザーエージェントを開発するメーカーは、ぜひそのあたり、十分考慮に入れてくれると嬉しいなあと思います。