Webユーザビリティのランキング調査

企業サイト ユーザビリティランキングという調査があるのをご存知でしょうか?日経BP社が2004年から毎年実施しているヒューリスティック調査で、国内主要企業のWebサイトを調査対象とし、点数によってランク付けをするものです。

以前、私がユーザビリティの評価手法(その2):ヒューリスティック評価とは?で述べたように、この調査も、ユーザーインターフェース設計のガイドラインに基づいて実施されています(この調査のガイドライン(調査項目)を見る)。それ自体は問題ないのですが、ユーザビリティの本質を検討するうえで、このような点数によるランク付けには、限界があるのでは?と思っています。

まず問題なのは、この調査では「ユーザビリティ」のことを「使いやすさ」だと定義していることです。

インターネットの媒体価値が急速に高まり、企業にとってWebサイトをビジネスにいかに結びつけるかが重要になっている。そこで欠かせないのがユーザビリティ(使いやすさ)だ。

企業サイト ユーザビリティランキング 2006の冒頭より引用)

どうやら、この調査の評価基準は「万人にとって使いやすいものが、すなわちユーザビリティの優れたもの」であるようです。ユーザビリティ=万人にとっての使いやすさ?で述べたように、ユーザビリティとは本来、特定のユーザーが特定のゴール(目的)を達成できるかどうかが大事であり、単に「使いやすいか」ではなく「スムーズに使えて、その結果満足できたか」までもが評価軸として含まれるべきものです。
その意味で、「このランキングで上位だから、うちのサイトのユーザビリティは十分優れている」とは必ずしも言えないでしょうし、そもそも、点数で一喜一憂すべきものではないように思います。

とはいえ、Webサイトを運営しているウェブマスターさんが「自社サイトが他社サイトと比べて、ユーザビリティの面でどの程度優れているのか(あるいは優れていないのか)を、客観的な指標を用いて知りたい」と望む気持ちもわからないではありません。客観的な指標、すなわちひとつの明確な基準(ものさし)が存在すれば大変便利でしょうし、その意味で、日経BP社の調査はひとつの壮大な挑戦なのかもしれません。
ただ、今の時点での私見では、ユーザビリティ評価のベースはあくまでもターゲットユーザーのサイト利用行動であり、そのターゲットユーザーがWebサイトの目的によって多様化している以上、ひとつの指標(ものさし)だけでユーザビリティを評価するのは限界があるように思います。ものさしを作ることは大事かもしれませんが、そのものさしは、ひとつではないのでは?と思うのです。(もちろん、ひとつの指標(ものさし)を使って効率的に評価できることもあるでしょう。たとえばアクセシビリティを評価する場合にはある程度有効だと思います。実際、今回の日経BP社の調査にも、アクセシビリティの分野に含まれる評価項目が存在しています。)

以上のことを踏まえ、ユーザビリティの評価は、以下のようにあるべきだと考えます。

  • Webサイトごとに実施し、単に「使いやすいか」ではなく「特定の目的をもったユーザーがスムーズに使えて、その結果満足できたか」という観点で実施すること
  • 評価は点数付けではなく、問題点の洗い出しと、具体的な改善提案にすべきこと

今回の企業サイト ユーザビリティランキングのような調査は、たとえば、「他社サイトで優れていると評価されている部分を、自社サイト改善の参考にしたい」といったスタンスで見れば十分ではないでしょうか。