ユーザビリティの評価手法 (その1) : ヒューリスティック評価

ヒューリスティック評価とは、ユーザビリティ評価のための手法のひとつで、ユーザビリティの専門家が、評価対象のサイトを見て、様々な問題点を指摘する手法です。

ユーザビリティ専門家が、自身の経験則に基づいて評価するので、「効率良く短期間でチェックができる」「そのぶんコストも低く抑えられる」という長所がある一方で、「専門家の個々人のスキルに依存する(つまり、どの専門家に依頼するかで、アウトプットの質が変わってしまう恐れがある)」という短所があります。

もちろん、実際のヒューリスティック評価においては、ユーザビリティ専門家が主観的に問題点を指摘するだけではなく、あらかじめ用意されているチェック項目 (ユーザーインターフェース設計などのガイドライン) に基づいて、客観的な観点での評価も併せて行なうのが一般的です (その際にベースとなる考えかたのひとつに、Jacob Nielsen の「ユーザビリティに関する10のヒューリスティクス (問題解決に役立つ知見) / Ten Usability Heuristics」があります)。

評価のアウトプットは、単に問題点を列挙するだけというケースもあれば、問題点の是正提案までやってくれるケースもあります。当然、後者の方が理想ですが、そのためには、単にガイドラインに照らし合わせて評価するだけだけでなく、ターゲットユーザー像やビジネスコンテキスト(商売上の習慣や企業のカルチャーなど)といったものに関する理解も必要になります(その際には、ユーザビリティ専門家への適切な情報提供が求められます)。いい加減なヒューリスティック評価ですと、単純に、ガイドラインに照らし合わせた機械的な判定に終始してしまう例も見られるので、注意が必要です。

ヒューリスティック評価の対象としては、もちろん実在する(公開されている既存の)Webサイトでも良いですが、公開前のプロトタイプレベルでも評価は可能です。できれば、Webサイト構築の上流工程(具体的な作り込みに入る前の企画/設計段階)からユーザビリティ専門家に参画してもらい、基本的な画面設計(ワイヤーフレーム)に落とし込むところまで関わってもらう(つまり、基本的な画面設計ができている時点で、すでにヒューリスティック評価を実施しており、できるだけ問題点を潰している)というのが理想的ですね。